香港ビジネスガイド活用術

香港での飲食店の出店について

香港での飲食店の出店について

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飲食店のアジア進出を希望される方の多くが中国本土への進出を考えています。確かに中国は大きなマーケットですが、物流、法整備、日本食文化の浸透などもう少し時間がかかります。香港は飲食ビジネスの参入障壁が低い都市ですので、まずは香港に出店し、メニュー開発や中華文化を学んでもいいですし、香港で店舗名をブランド化させてから中国本土への展開という方法も面白いでしょう。
香港は、日本の農水産物が世界で一番多く輸入されている場所なので、海外で日本食が一番浸透している都市だと言えます。そのため日本食店も非常に多いのですが、香港で成功する最大のポイントは、香港人の潜在的ニーズを掘り起こし、日本文化と香港文化をどうのように融合をさせるかにかかっています。今回はBistro日本グループがプロデュースおよび運営をしている博多道場を例に出店までの流れを見ていきましょう。

出店コンセプト

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日本で飲食店を始める場合、「独資」「合弁」「フランチャイズ」の3つ方法があります。飲食店をお持ちでない方は、「独資(独自ブランド、フランチャイズ)」ということになると思います。香港の博多道場の場合、オーナーは博多道場とは資本関係はないため、香港でのフランチャイジーとして出店しました。
現状の香港の日本食にはないコンセプトとして“地方メシ”、そして博多の“モツ鍋”にスポットライトをあてました。店舗名に関しては、日本でモツ鍋をメインとする店舗をいくつか探し、ご縁のあった博多道場とライセンス契約を結びました。独自ブランドでの展開も可能だったのですが、日本に博多道場があることによる香港での宣伝効果を狙いました。日本で例えると「ニューヨークにあるXXX店が東京に進出!」ということになり、各種メディアに取り上げられやすくなります。

事業計画

出店を計画する際は、各種データをもとに事業計画を組み上げていきます。香港出店の際、最初の障壁となるのは立地開発(家賃)です。香港では、地区により所得水準や日本食普及率が大きく異なり、家賃の高い場所が飲食店にとっての一等地とは限らないので、香港に精通している人へ相談をしながら出店地区を決めるといいでしょう。博多道場(100席の居酒屋)をモデルとした場合の各種数値は以下の通りです。

原価率:約30%

原価率は、日本とほぼ同様の割合となっています。香港で食材を仕入れる場合、現地の食材卸会社を使うか、自社物流で調達するか2つの方法に限られます。現地の食材卸会社を利用した場合、競合店と似たような商品と価格になってしまうため、自社物流により独自の商品を輸入できるかが鍵となります。自社物流を目指すのであれば、物量を増やす必要があるため、多店舗化を前提に準備を進める必要があります。

人件費率:約20%

店長の給与はHK$15,000-20,000、通常スタッフはHK$9,000前後、ボーナスは年1ヶ月分、間接人件費は強制積立年金(給与の5%)のみです。給与の決め方は、面接時に希望給与を聞いて、相場、経験、技術などに照らして決定します。香港の給与相場を知らないと、相手の「言い値」で採用してしまうだけでなく、開店後の人間関係のトラブルのもとになるので、まずは香港の飲食店の給与相場を知る必要があります。
日本人を駐在させた場合、高い賃金に加え、住宅手当などを支払う必要があるので、日本人駐在員を極力減らすことが人件費抑制の鍵となります。博多道場では、広東語を話せる日本人1名が2店舗を管理しています。

家賃比率:約16~20%

契約期間は3~5年、保証金は3~4ヶ月分となります。更新時の経済状況により大幅な値上げをしてくる場合もあるので、3~5年の契約期間内で償却することをお勧めします。土地の狭い香港では、繁華街の路面店家賃は非常に高く、採算を取ることが難しいので、多くの飲食店は人通りの少ない路面店(約3万円~/坪)、商業ビル内(約3万円~/坪)、ショッピングモール(約3~6万円/坪)に店舗を構えます。ショッピングモール内に出店する場合、香港での実績なども加味されるので、ディベロッパーとの直接交渉となります。一般の優良物件は、競争率が高いため早目に手付けを打つ必要があり、事前に会社設立と銀行口座開設をした方が良いでしょう。
不動産屋の物件情報に面積が表記されていますが、サイズにはGross(契約面積)とNet(実効面積)の2種類があるので注意が必要です。ほとんどの場合、Grossの面積が記載されており、実際の面積(Net)はGrossの70%前後で、中には50%を切る場合もあります。不動産業者からの情報を鵜呑みにせず、必ずサイズの入った図面を入手し、実際に現地に足を運ぶことが必要です。

設計・施工・ライセンス

博多道場・尖沙咀店の場合は、夜逃げ物件の情報をいち早く入手し出店したため居抜きの状態でしたが、香港ではスケルトン渡しが一般的です。設計についても香港の建築法令に詳しい設計会社に依頼した方がいいでしょう。施工会社については、一般的には設計会社から紹介してもらうのですが、メリットリンク社では入札方式により施工会社を決めています。
ライセンス(許可証)取得は一番の難関です。博多道場の場合は、General Restaurant License(飲食店営業許可証)とLiquor License(アルコール提供許可証)を取得しています。消防局、建設局、食品衛生局、警察局の多岐に渡る法令知識および交渉力を必要とするため、通常ライセンスコンサルタントに依頼します。このライセンスコンサルタントの力量により、出店時期や設計・設備に大きな影響を及ぼすことがあります。

メニュー開発

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香港人の好きな日本食=寿司・刺身です。中華料理は生食をしないため、20年前までは刺身を食べられる人の割合は少なかったのですが、香港も生食化が進み、多くの世代が刺身を好んで食べるようになりました。店舗にとっても客単価を上げるアイテムとして、とんかつ屋やラーメン屋でも刺身が提供されています。また、香港は食事中にあまり飲酒をしない文化なので、ドリンクの売上比率は約15%、うちアルコールは約10%ほどなので注意が必要です。
博多道場の場合、本物の日本食を伝えるため味付けなどは香港人向けにアレンジしていませんが、豚骨ラーメンや海老天婦羅など香港人が好むものを増やし、日本人でも香港人でも対応できるようメニューに幅を持たせています。
食文化には時間的な積み重ねが必要なので、タイミングが早すぎても流行りませんし、日本で流行っているからといって売れるとも限りません。売れるアイテムを見つけるためには、香港文化に接し、香港人の考えを知ることが一番大切です。

出店人材

日本から駐在スタッフを派遣した場合、英語が話せたとしても香港の生活に慣れるまでに半年、香港の商習慣や文化を理解するまでに更に半年以上掛かります。また、香港人は社内の人間関係が上手くいかないとすぐに辞めてしまうので、香港人スタッフから信頼される人間関係の構築も必要となります。
香港は契約社会ですから、給与や解雇などのトラブル回避のために、弁護士に依頼して正しい契約書を作成することはもちろんのこと、店舗内トラブルを避けるために社内規則も作成した方がいいでしょう。
社員教育については、中華文化の“メンツ”などを考慮して、日本スタイルと香港スタイルの良いところを組み合わせてプログラムを作ります。香港に着任したら「日本の場合は×××だ」などと野暮なことは言わずに、香港社会に正面から入り込むことが必要です。そうすればきっと香港人も親身になってサポートしてくれるでしょう。

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